
WEB費用の予実管理|月10分で続く「予算と実績」の見える化
10月の会議で、上司からふいに「WEBの予算って、今年あといくら残ってる?」と聞かれた。年度のはじめにはきちんと予算表を作ったのに、そのあと開いていない。経理に聞けば分かるはず……と思って確かめたら、まだ請求が来ていない発注が2件あって、数字が合わない。そんなふうに、帰りの電車でひやっとした経験はありませんか。
それは、あなたの管理がずさんだからではありません。WEBの外部費用は、「発注する日」と「請求が来る日」と「支払う日」がばらばらで、しかも制作費・広告費・ツールの月額と、払い方まで散らばっています。立てたときの予算表だけでは、追いかけられないのが自然なんです。
結論:WEBの外部費用の予実管理(予算と実績を見比べて管理すること)は、次の3つで回り始めます。①1枚の表に「予算・発注済み・支払済み」の3列を作る → ②請求書を待たず、発注した時点で1行書く → ③月に一度10分、残りを確かめ、ズレそうなら早めに一言相談する。
いちばん効くのは②。「発注済み」で見ておけば、「まだ残っていると思っていたのに、実はもう使っていた」がなくなります。
何が起きているのか:予算表が「立てたまま」になる理由
予実管理が続かないとき、たいてい次のどれかが起きています。
- 発注と請求の時期がずれる:制作の発注は6月、納品と請求は9月、支払いは10月——ということがよくあります。経理の帳簿は「支払い」で動くので、そこだけ見ると、まだお金が残っているように見えてしまいます。
- 払い方が散らばっている:制作会社への振込、広告の自動引き落とし、ツールのクレジットカード払い。明細が別々なので、全体をつかみにくくなります。海外のツールでドル建てのものは、為替で毎月の金額も少しずつ変わります。
- 追加費用が予算表に戻ってこない:「この修正は追加になります」と言われてOKしたものが、口頭やチャットで済んでいて、表に載っていない。
- 見る日が決まっていない:「気になったら見よう」だと、気になるのはたいてい、もう余裕がなくなってからです。
ここで大事なのは、細かい管理をがんばるほど続くわけではないということ。経理のような正確な帳簿は、経理がつけてくれています。WEB担当に必要なのは、「あといくら使えるか」を、自分の言葉ですぐ答えられる状態です。
予実管理の表は「予算・発注済み・支払済み」の3列でつくる

まずは表を1枚だけ作ります。スプレッドシートで十分です。年度のはじめに作った予算表があれば、その右に列を足すだけでかまいません。
| 費目 | 予算(年) | 発注済み | 支払済み | 残り(予算−発注済み) | メモ |
|---|---|---|---|---|---|
| 固定費(サーバー・ドメイン・保守・ツール月額) | 更新月・支払い方法 | ||||
| 施策費(改修・制作・記事・広告など) | 発注日・発注先 | ||||
| 予備費 | 使った理由 |
ポイントは、「残り」を「予算 − 発注済み」で計算することです。「支払済み」は経理の数字と突き合わせるための列で、使える残りを見るのは「発注済み」のほう。ここを分けておくだけで、冒頭のような「まだ残っていると思っていた」が起きにくくなります。
費目の分け方は、来年のWEB予算の立て方で紹介した「固定費・施策費・予備費」の3つをそのまま使うと、予算表と予実の表がつながって見やすくなります。
細かく作りすぎないこともコツです。最初は3行でも大丈夫。施策費の中身は、案件ごとに下に行を足していけば十分です。金額は税込か税抜か、どちらかにそろえて、表の上に一言書いておきましょう。経理の数字と比べるとき、ここがずれていると合わない原因になります。
請求書を待たず、「発注した時点」で1行書く
表を作ったら、記録のタイミングを決めます。おすすめは、発注した日(見積もりにOKを出した日)に、その場で1行書くことです。
1行に書くのは、これだけで足ります。
- 発注日
- 発注先と内容(例:「〇〇制作所/採用ページ改修」)
- 金額(見積もりの金額。幅がある場合は上の金額)
- 支払い予定の月
あとで請求書が届いて支払いが済んだら、「支払済み」の列に金額を入れるだけです。追加費用をOKしたときも同じで、チャットやメールで了承したらそのまま1行足します。追加になりやすい場面は、「追加費用です」を減らす|見積もり前に確認したい5つの境界にまとめています。
ツールの月額や広告費のように毎月出ていくものは、毎回書かなくて大丈夫です。年度のはじめに「月額×12か月」を発注済みとして入れておき、プラン変更や解約をしたときだけ直す。これで手間がぐっと減ります。
月に一度、10分だけ表を開く
記録の次は、見る日を決めます。毎月の第1営業日の午後など、カレンダーに10分の予定を入れてしまいましょう。
10分の使い方は、この順番がおすすめです。
- 記録もれを拾う(3分):先月のメール・チャットで、発注や追加費用のOKを出したものが表に載っているか見る。カード明細があれば、ツールの請求も軽く確かめる。
- 残りを見る(3分):費目ごとの「残り」を確認する。年度の経過(たとえば半年たったなら半分くらい)と比べて、使い方が早すぎないか、ざっくり見る。
- この先の予定と比べる(4分):年度内にやりたいことの見積もりと、今の残りを並べて、足りるかどうかを見る。
経理の数字との突き合わせは、毎月でなくても大丈夫です。四半期に一度くらい、「支払済み」の合計が経理の数字と合っているかを確かめれば十分です。ずれていたら、たいていは記録もれか、税込・税抜の違いです。
ズレそうなときは、早めに一言相談する
月の点検で「このままだと足りなさそう」と気づいたら、それは失敗ではなく、予実管理がちゃんと働いた証拠です。早く気づくほど、選べる手が増えます。
相談するときは、次の3つをセットにすると話が通りやすくなります。
- 今の状況:「施策費の残りが48万円で、下期にやりたいことの見積もりが合計70万円です」
- ズレた理由:「上期に追加修正が12万円発生したためです」
- 案を2つ:「広告を月3万円に抑えて、不足の10万円を予備費から充てる案と、採用ページ改修を来年度に回す案があります」
案があると、上司は「どちらにするか」を選ぶだけで済みます。WEB施策の効果もあわせて伝えたいときは、WEB施策の費用対効果を社内に説明するも参考になります。
具体例:「まだ72万円ある」と思っていたCさんの場合
社員80人ほどの専門商社で、総務と兼務でWEBを担当しているCさんのケースです(よくある状況をもとにした例です)。
- 年度の予算:年間240万円。固定費48万円(月4万円×12か月)、施策費168万円、予備費24万円(総額の1割)。
- 9月末(上期の終わり)に起きたこと:経理の数字では、施策費の支払いは96万円。「168万円 − 96万円で、あと72万円ある」と思い、下期に採用ページ改修(見積もり40万円)と広告(月5万円×6か月=30万円)、合わせて70万円を計画していました。
- 表を作ってみたら:6月に発注した下層ページの改修24万円が、納品・請求が10月で、まだ支払われていなかったことに気づきました。発注済みで見ると120万円で、本当の残りは48万円。計画の70万円に対して、22万円足りない状態でした。
- やったこと:
- 「予算・発注済み・支払済み」の3列の表を作り、上期の発注を全部書き出した。
- 上司に、状況・理由・案2つをセットで相談した。
- 広告を月3万円(6か月で18万円)に抑え、採用ページ改修40万円と合わせて58万円に。不足の10万円を予備費から充てることで決まった(予備費の残りは14万円)。
- 以後、発注したらその日に1行書き、毎月第1営業日に10分だけ表を見ることにした。
- 変わったこと:年明けに「あといくら?」と聞かれたとき、表を見てすぐに答えられました。「数字をちゃんと押さえてくれているから、来年の予算も相談しやすい」と言ってもらえたそうです。
気づいたのが3月だったら、選べる手はほとんど残っていなかったはずです。9月に気づけたから、広告を少し抑えるだけで、やりたいことを両方続けられたという例です。
続けると、何が変わるか
- 「あといくら?」にすぐ答えられる。会議で聞かれても、表を開けば一言で返せます。
- 年度末の駆け込みや、使い残しが減る。早めに残りが見えるので、「余ったから慌てて使う」「足りなくて止める」の両方を避けやすくなります。
- 来年の予算が立てやすくなる。1年分の発注の記録が、そのまま来年の予算づくりの材料になります。
- 制作会社との話が落ち着いてできる。追加費用が出たときも、「今の残りだとここまでなら」と根拠を持って相談できます。
明日やること
- 年度のはじめに作った予算表を開く(なければ、固定費・施策費・予備費の3行だけの表を作る)。
- 右に「発注済み」「支払済み」「残り」の3列を足す。
- 今年度に発注したものを、思い出せる範囲とメールの履歴から書き出す。
- カレンダーに、毎月一度・10分の「予算チェック」の予定を入れる。
全部を一度にやらなくて大丈夫です。今日は2の「列を足す」だけでも、次に発注したとき、自然に1行書けるようになります。
チェックリスト
まずはこの3つができていれば十分です。最低ラインはここに絞ります。
- 予算・発注済み・支払済みの3列がある表を1枚持っている
- 残りを「予算 − 発注済み」で見ている
- 月に一度、表を開く日を決めている
残りは「余裕があれば」の任意項目です。当てはまらなければ、空欄のままで問題ありません。
- 発注したとき(見積もりにOKを出したとき)に、その日のうちに1行書いている
- 追加費用をOKしたときも、表に1行足している
- ツールの月額・広告費は「月額×12か月」で先に入れている
- 金額を税込・税抜のどちらかにそろえ、表に書いている
- 四半期に一度、支払済みの合計を経理の数字と突き合わせている
- ズレそうなときは、状況・理由・案2つをセットで早めに相談している

予算は、立てた日がいちばん正確で、そこから少しずつ現実とずれていくものです。ずれること自体は、誰のせいでもありません。大事なのは、早めに気づけること。発注したら1行、月に一度10分。それだけで、「あといくら?」に落ち着いて答えられる担当者になれます。まずは今の予算表に、3つの列を足すところから始めてみましょう。
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