
Googleタグマネージャー(GTM)の始め方|タグ管理の第一歩
「広告のタグを入れたいので、制作会社に依頼してください」 「チャットツールを試したいから、このコードをサイトに貼って」
——そう言われるたびに、依頼メールを書いて、見積もりを待って、反映を待つ。ようやく入った頃には、試したかった熱が少し冷めている。そんな経験、ありませんか。
自社サイトをひとりで回していると、「たった数行のコードを貼るだけなのに、自分では触れない」というもどかしさがついて回ります。かといって、テーマファイルを自分で編集するのは怖い。壊したら誰も直せない。その慎重さは、まったく正しい判断です。
その板挟みを、ゆるめてくれる道具があります。Googleタグマネージャー(GTM)です。今日は、名前は聞いたことがあるけれど手を出せていない——という状態から、最初の1本を公開するところまでを、一緒に順番に見ていきます。
結論:GTMを始める手順は、①アカウントとコンテナを作る → ②サイトに2か所コードを貼る(この1回だけ制作会社に頼んでOK)→ ③最初のタグ(GA4)を作る → ④プレビューで動作を確かめる → ⑤公開する、の5つです。
一度この土台さえ作れば、次からのタグ追加はサイトのファイルを触らずに、自分の手元だけでできるようになります。今日は「①〜②を制作会社に相談するメールを1通書く」だけでも、十分な一歩です。
何が起きているのか:タグが増えるほど、身動きが取れなくなる
いま、企業サイトには思いのほかたくさんの「タグ」が入っています。
タグというのは、サイトに貼りつける短いコードのことです。アクセス解析(GA4)、広告の効果測定、チャットツール、ヒートマップ、SNSの埋め込み——どれも「このコードを<head>に貼ってください」という形で配られます。
問題は、その貼りつけ先がサイトのファイルそのものだという点です。だから、タグを1本足すたびに、次のことが起きます。
- 制作会社への依頼が発生する(費用と時間がかかる)
- 保守契約の範囲内かどうか、そのつど確認が要る
- 誰がいつ何を入れたのか、記録が残らない
- 使わなくなったタグが、剥がされないまま残り続ける
結果として、「サイトに何が入っているか、担当者自身も把握できていない」という状態になりがちです。これは怠慢ではありません。タグが増えるほど、そうなるのが自然な構造だからです。
GTMは、この構造を変えます。サイトには「GTMのコード」を1回だけ貼っておき、あとはGTMの管理画面から、タグを出し入れする——そういう仕組みです。例えるなら、壁に直接ポスターを画鋲で留めていたのを、掲示板を1枚だけ壁に取り付けて、あとはその掲示板に貼り替えるように変えるイメージです。壁(サイトのファイル)を傷つけるのは、最初の1回だけで済みます。
補足:GTMは無料で使えます(通常の企業サイトの規模なら、費用を気にせず始められます)。ただし、画面の名称やボタンの位置は更新されることがあります。この記事では変わりにくい流れを中心にお伝えしますので、細かい画面表示はGoogleタグマネージャーの公式ヘルプで最新をご確認ください。
手順を小さく分ける:最初の1本を公開するまでの5ステップ

一度に全部を理解しようとしなくて大丈夫です。次の順番で、少しずつ進めます。
- アカウントとコンテナを作る(10分)
tagmanager.google.com にGoogleアカウントでログインし、アカウントを作ります。アカウント名は会社名、その中に作るコンテナ名は自社サイトのドメイン(例:example.co.jp)にしておくと、後で迷いません。ターゲットプラットフォームは「ウェブ」を選びます。作成すると、GTM- から始まるコンテナIDと、貼りつけ用のコードが2つ表示されます。 ここで大事なのは、必ず自社のGoogleアカウントで作ること。制作会社のアカウントで作られると、契約が切れたときに引き継げなくなります(納品時に受け取るデータ・アカウント一覧と同じ考え方です)。
- サイトに2か所コードを貼る(この1回だけ依頼してOK)
表示された2つのコードを、それぞれ次の場所に貼ります。
- 1つ目:
<head>タグの中の、できるだけ上のほう - 2つ目:
<body>タグのすぐ下(こちらはJavaScriptが無効な環境向けの補助です)
全ページに入る必要があるので、WordPressならテーマのヘッダーファイルか、GTM用のプラグイン、あるいはテーマの設定画面に「head内に挿入するコード」の入力欄があればそこへ。自分で触るのが不安なら、ここだけ制作会社に頼んで大丈夫です。「今後のタグ管理を自社でやりたいので、GTMのコードを全ページに設置してほしい」と伝えれば通じます。これが最後の依頼になります。
- 最初のタグ(GA4)を作る(15分)
GTMの管理画面で「タグ」→「新規」。タグの種類からGoogleアナリティクス系のタグを選び、GA4の測定ID(G- から始まる文字列。GA4の管理画面 → データストリームで確認できます)を入れます。トリガーには「All Pages(全ページビュー)」を選びます。これで「全ページでGA4を動かす」という1本ができます。 ※このタグの名称は「Google タグ」など、時期によって表示が変わります。迷ったら「Googleアナリティクス」のグループから探してください。
- プレビューで動作を確かめる(10分)
いきなり公開せず、右上の「プレビュー」を押します。自社サイトのURLを入れると、実際のサイトが別ウィンドウで開き、どのタグが動いたかを横の画面で確認できます。ここで「作ったタグが Fired(配信された)側に入っているか」を見ます。あわせて、GA4側の「リアルタイム」レポートに自分のアクセスが出れば、計測はつながっています。
- 公開する(1分)
プレビューで確認できたら、右上の「公開」を押します。バージョン名を聞かれるので、「GA4設置」のように何をしたかを書いておきます。これが変更履歴になり、後から「いつ何を入れたか」を追えるようになります。
まずは1と2だけ、今日進めれば十分です。3〜5は、コードが設置されてからで大丈夫です。
具体例:GTMがあるとき・ないときで、依頼はこう変わる
「広告のリターゲティングタグを入れたい」と社内から相談が来た日を、比べてみます。
| GTMがないとき | GTMがあるとき | |
|---|---|---|
| やること | 制作会社にタグを送って設置依頼 | 自分でGTMにタグを1本追加 |
| かかる時間 | 依頼〜反映まで数日〜1週間 | 15分程度 |
| 費用 | 作業費が発生することがある | 追加費用なし |
| やめるとき | ふたたび依頼して剥がしてもらう | 管理画面で一時停止・削除 |
| 記録 | メールを遡らないと分からない | バージョン履歴に残る |
差が出るのは、じつは「入れるとき」より「やめるとき」です。GTMがないと、使わなくなったタグを剥がすのにも依頼が要るため、つい放置されます。放置されたタグは、ページの表示速度を少しずつ重くしたり、Cookie同意の説明と食い違ったりする原因になります。出し入れが軽いということは、サイトをきれいに保ちやすい、ということです。
もう一つ、身近な例を。GA4で「問い合わせ完了」を計測したくなったとき、サンクスページがない形のフォームだと、GA4の管理画面だけでは対応しきれないことがあります(詳しくは問い合わせCVをGA4で計測する設定にまとめています)。こういう場面で、GTMが入っていれば選択肢が残る。逆に入っていないと、そこで手詰まりになりがちです。今すぐ使わなくても、土台として先に入れておく価値があるのは、このためです。
気をつけたい、たった一つの落とし穴
GTMで最初につまずきやすいのが、二重計測です。
すでにテーマファイルに直接GA4のタグが貼られているサイトで、GTMからもGA4のタグを配信すると、同じアクセスが2回数えられます。数字が急に倍近くに見えて、「サイトが伸びた」と勘違いしてしまうこともあります。
対処はシンプルで、どちらか一方に寄せるだけです。GTMに移すなら、テーマ側の古いタグを外してもらう。判断がつかないときは、GA4の「リアルタイム」を見ながら1ページ開いて、アクセスが1回だけ数えられているかを確かめれば分かります。
もう一つ、初めのうちによくあるのが、プレビューでは動くのに本番で動かないというもの。これはたいてい、「公開」ボタンを押し忘れているだけです。GTMは、公開して初めて実際のサイトに反映されます。慌てなくて大丈夫。落ち着いて右上を見てみてください。
あなたへの影響
- タグの追加・停止が自分の手元で完結するようになり、「試したいのに試せない」という足止めが減る。
- サイトに入っているタグが一覧で見えるようになり、「何が入っているか分からない」という不安が解消される。
- バージョン履歴が残るので、いつ何を入れたかを後から説明できる。担当が変わっても追える(引き継ぎ資料にIDを1行足すだけで済みます)。
- 使わないタグを剥がしやすくなり、表示速度やCookie同意の管理(Cookie同意バナーの基本)が保ちやすくなる。
- 制作会社への小さな依頼が減り、限られた予算を本当に必要な改修に回せるようになる。
明日やること
- まず、自社サイトにGTMがすでに入っていないかを確認する。サイトを開いて右クリック →「ページのソースを表示」→
Ctrl+F(MacはCmd+F)でGTM-を検索。見つかれば、すでに誰かが設置済みです(制作会社に管理権限の移管を相談しましょう)。 - 入っていなければ、tagmanager.google.com で自社のGoogleアカウントを使い、アカウントとコンテナを作ってみる。コードが表示されるところまでで、今日はOKです。
- 制作会社へ、設置依頼のメールを1通書く。文面はこれで十分です。
件名:GTM(Googleタグマネージャー)設置のご相談
お世話になっております。
今後のタグ管理を自社側で行いたく、Googleタグマネージャーのコードを全ページに設置いただけないでしょうか。
コンテナID:GTM-XXXXXXX
設置場所:<head>内の上部、および<body>直後(管理画面に表示される2つのコード)
あわせて、現在サイトに直接設置されているタグ(GA4・広告など)があれば、一覧をご共有いただけると助かります。
お手数ですが、よろしくお願いいたします。
一度に全部やらなくて大丈夫です。今日は1番の確認だけでも、サイトの現在地がひとつはっきりします。
チェックリスト
全部を完璧にやろうとしなくて大丈夫です。まずは最低ラインの3つから。残りは「余裕があれば」でかまいません。
最低ライン(これだけは)
- GTMのアカウントを自社のGoogleアカウントで作った(制作会社名義になっていない)
- コンテナのコード2つを、
<head>内の上部と<body>直後に設置した(依頼でもOK) - GA4のタグを1本作り、プレビューで動作を確認してから公開した
余裕があれば(推奨)
- テーマに直接貼られたGA4タグが残っていないか確認した(二重計測を防ぐ)
- GA4の「リアルタイム」で、1ページ開いたときに1回だけ数えられることを確かめた
- 公開時のバージョン名に「何をしたか」を書いた(例:「GA4設置」)
- コンテナID(
GTM-)を引き継ぎ資料に1行メモした - 制作会社に、現在サイトに直接入っているタグの一覧を共有してもらった
- 使っていない古いタグがないか、一度眺めてみた
- 外部にデータを送るタグが増えたら、Cookie同意の説明と食い違っていないか確認した

GTMは、名前がいかにも専門的で、身構えてしまう道具です。でも中身は、「壁に直接貼るのをやめて、掲示板を1枚つける」というだけの、とても素朴な発想でできています。
そして、この道具がいちばん効くのは、じつは高度なことをするときではありません。「ちょっと試したい」を、誰かに頼まずに試せるようになる——その小さな自由が、一人でサイトを回す毎日をずいぶん軽くしてくれます。
今日、コンテナを1つ作れたなら、それで十分な一歩です。タグは、あとからいくらでも増やせます。焦らず、掲示板を1枚だけ、壁に取り付けるところから始めましょう。
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