
制作会社と連絡が取れない|サイトを止めないための確認と備えの手順
メールを送って、三日。返事がありません。
電話をかけると、呼び出し音は鳴るのに誰も出ない。前はその日のうちに返ってきたのに、と思いながら、送信済みフォルダをもう一度開く。そんな夕方を過ごしていませんか。
まず、落ち着いて大丈夫です。 連絡が取れないことと、サイトが今すぐ止まることは、別の話です。そして、あなたが今日できることは、思っているよりちゃんとあります。
結論:やることは3つの順番です。
①確認する:サイトとドメインとメールが「いつまで生きているか」を、制作会社に聞かずに自分で確かめる。
②保存する:今のうちに、サイトのファイル・原稿・画像を自分の手元に落としておく。
③相談する:次に頼る先(サーバー会社・別の制作会社・専門家)に渡せるよう、分かったことを1枚にまとめる。
全部で1〜2時間ほど。いちばん急ぐのは②の保存です。理由は後で説明します。
何が起きているのか
連絡が取れない=廃業、とは限りません
不安なときほど、最悪の想像が先に来ます。でも実際には、次のような理由のほうがずっと多いです。
- 担当者が退職・異動して、引き継ぎのメールが自社に届いていない
- 担当者一人が体調を崩している、あるいは長期の休みに入っている
- 会社の代表アドレスが変わった、迷惑メール判定でこちらのメールが届いていない
- 単純に、繁忙期で手が回っていない
小さな制作会社は、担当者がそのまま窓口であることが多く、その一人が止まると連絡ごと止まって見える構造になっています。相手を疑う前に、まずこの可能性を頭に置いておくと、こちらの言葉もきつくならずに済みます。
とはいえ、確認と備えは相手の事情と関係なく進められます。「疑うから確認する」のではなく、「自社のサイトだから、自社で状態を把握しておく」。この立て付けにしておくと、あとで連絡がついたときにも気まずくなりません。
急いだほうがいいのは「期限のあるもの」
サイトは、放っておけば動き続けるものではありません。期限が来ると止まるものが、いくつも組み合わさってできています。
| 止まるもの | 期限の目安 | 止まると何が起きるか |
|---|---|---|
| ドメインの有効期限 | 年1回(多くは1年ごと) | サイトも独自ドメインのメールも、まとめて使えなくなる |
| サーバーの契約 | 月ごと/年ごと | サイトが表示されなくなる。解約後はデータが消えることもある |
| SSL証明書の有効期限 | 3か月〜1年 | ブラウザに警告が出て、訪問者が入りづらくなる |
このうち、いちばん影響が広いのがドメインです。ドメインが切れると、info@自社ドメイン のようなメールも一緒に止まります。サイトが見られないだけでなく、お客さんからの問い合わせメールも届かなくなるわけです。
だからこそ、まず「あと何日あるか」を知るところから始めます。
手順を小さく分ける

1. 確認する:相手に聞かずに分かることを集める(30分)
制作会社に問い合わせなくても、外から確かめられることが実はかなりあります。
ドメインの有効期限を見る。
「WHOIS(フーイズ)」という、ドメインの登録情報を照会する仕組みがあります(=ドメインの登録者や有効期限を、誰でも調べられる公開の名簿のようなもの)。
.jp.co.jpのドメイン → JPRS(日本レジストリサービス)のWHOIS.com.netなど → ICANN Lookup や、各ドメイン登録会社のWHOIS検索
自社のドメイン名を入れて検索すると、有効期限(Expires / 有効期限) が表示されます。ここが今日から何日先かを、まずメモしてください。
登録者名については、.jp 系は組織名が表示されることが多く、.com 系は個人情報保護のため伏せられていることが多いです。伏せられていても、あわてなくて大丈夫です。期限が分かれば、今日の目的は果たせています。
サーバーとSSLの状態を見る。
SSL証明書の期限は、自社サイトをブラウザで開いて、アドレスバーの鍵マークをクリックすれば確認できます(証明書の詳細に有効期間が出ます)。詳しい手順はSSL証明書の有効期限を確認する方法にまとめてあります。
サーバーは、自分が管理画面にログインできるかを試すのがいちばん早いです。IDとパスワードが手元にあれば、それだけで状況はかなり明るくなります。
「自分で入れるもの」を数える。
紙でもメモアプリでも構いません。次の6つに、○(入れる)/△(IDはあるが未確認)/×(分からない)を書き込んでください。
| 入れるか | |
|---|---|
| ドメインの管理画面(お名前.com、ムームードメインなど) | |
| サーバーの管理画面(エックスサーバー、さくら、ロリポップなど) | |
| CMSの管理画面(WordPressなど) | |
| GA4・Search Console | |
| 独自ドメインのメール(Webメールや設定) | |
| FTP/ファイルマネージャー |
○が1つでもあれば、そこが足がかりです。ぜんぶ×でも詰みではありません。次の手が変わるだけです。名義そのものの確認方法はドメイン・サーバーの名義は自社?管理権限を確認する手順に詳しく書いています。
支払いの流れを見る。
経理に頼んで、この半年、制作会社やサーバー会社への支払いが続いているかを見てもらってください。
- 制作会社へ毎月払っていて、それが止まっていない → まだ関係は生きている可能性が高い
- 制作会社経由でサーバー代を払っていて、請求が急に止まった → サーバー側の契約も止まっているかもしれない
お金の流れは、連絡がつかなくても見える数少ない手がかりです。
連絡の記録を残しておく。
これは今すぐ役に立つものではありませんが、あとで効きます。日付・手段(メール/電話)・相手・内容を、1行ずつ残しておいてください。
8/18(月) 10:20 メール送信(〇〇様宛・更新依頼)→ 返信なし
8/20(水) 14:05 代表番号へ電話 → 呼び出しのみ、応答なし
8/21(木) 09:30 会社の問い合わせフォームから送信 → 自動返信のみ
もし後日、社内で経緯を説明することになったり、専門家に相談することになったりしたとき、この数行がそのまま資料になります。書き足すのに1分もかかりません。
2. 保存する:手元に落とせるものは、今日落とす(30分)
ここがいちばん急ぐところです。
理由はひとつで、サーバーの契約が切れると、中のデータは戻せないことが多いからです。解約後の一定期間でデータを消す運用が一般的で、「あとで取り出そう」が間に合わないことがあります。今アクセスできるうちに、手元に写しを作っておく。それだけで、この先の選択肢がぐっと増えます。
入れる場所に応じて、取れるものを取ります。
CMS(WordPress)の管理画面に入れる場合
- 管理画面の ツール → エクスポート で、記事・固定ページのデータ(XMLファイル)を書き出す
- メディアライブラリの画像は、エクスポートに含まれないことがあります。数が多くて手作業がつらいときは、次のFTPからまとめて取るほうが早いです
FTP/ファイルマネージャーに入れる場合
- サイトのファイル一式をダウンロードする(WordPressなら、特に
wp-contentフォルダ。テーマ・プラグイン・画像がここに入っています) - サーバーの管理画面にバックアップ機能があれば、データベースのバックアップも取っておく
手順の全体像はサイトのバックアップと復元の基本で整理しています。今日は「完璧なバックアップ」でなくて構いません。取れるものを取るだけで十分です。
どこにも入れない場合
管理画面に入れなくても、諦めるのはまだ早いです。表に出ている情報は、見えている分だけ手元に残せます。
- 会社概要・サービス紹介・お知らせなどの文章を、コピーしてWordやテキストに貼る
- 掲載されている写真・図版を、右クリックで保存する
- サイトの構成(どんなページがあるか)を、URLの一覧としてメモしておく
地味な作業ですが、次に新しいサイトを作るとき、この「文章と画像」があるかないかで、費用も期間も変わります。原稿を書き直す手間がなくなるだけで、数十万円分の作業が消えることもあります。
社内にある元データも、あわせて集めておいてください。 ロゴのデータ、会社案内のパンフレット、製品写真の元ファイル。制作会社に渡した素材は、たいてい社内のどこかにも残っています。共有フォルダやメールの添付を10分探すだけで、けっこう出てきます。
3. 相談する:分かったことを1枚にまとめて渡す(30分)
ここまでで手元にある情報を、A4で1枚にまとめます。このまとめが、そのまま次の相談先への手土産になります。
書くのは、次の項目です。
- ドメイン名と、有効期限(分かった日付)
- サーバー会社の名前(分かれば)と、契約者が誰になっているか
- CMSの種類(WordPressなど)とバージョン(分かれば)
- 自社で入れる管理画面の一覧(さっきの○△×の表)
- 手元に保存できたもの(ファイル一式/記事データ/文章と画像だけ、など)
- 制作会社への連絡の記録
そのうえで、状況に応じて相談先を選びます。
まだ望みがあるとき(管理画面に入れる・支払いが続いている)
- 制作会社の代表番号・代表アドレス・問い合わせフォームの3つに、担当者個人ではなく会社宛で連絡してみる
- 内容は責める調子にしない。「担当の〇〇様と連絡が取れておりません。別の方でも構いませんので、状況をお知らせいただけますでしょうか」くらいで十分です
サーバー・ドメインの契約状況を知りたいとき
- サーバー会社・ドメイン登録会社のサポート窓口に直接問い合わせる
- ただし、契約者本人でないと回答してもらえないことがあります。その場合でも、「自社が契約を引き継ぐには何が必要か」は教えてもらえることが多いです。会社の登記簿や名刺など、自社の身元を示せるものを用意しておくとスムーズです
会社の状態そのものを確かめたいとき
- 国税庁の法人番号公表サイトで、商号や所在地の登録内容を確認できます
- より正確に登記の状態を確かめたいときは、法務局で登記事項証明書を取得する方法があります。誰でも取得できる書類です
- 未払いや契約の扱いなど、法律の判断が必要になる場面では、弁護士や、商工会議所・よろず支援拠点などの無料相談窓口を頼ってください。ここは自分たちだけで抱え込まないほうがいい領域です
新しい制作会社を探すとき
- さっきの1枚があれば、見積もりの精度が上がります。「今どうなっているか分からない」状態で相談するより、話が早く、費用も読みやすくなります
- 依頼の仕方は制作会社への見積もり依頼とRFPの作り方、複数社を並べて比べるなら制作会社の比較検討表の作り方が使えます
いま困っていない人へ:明日できる備え
ここまで読んで「うちは今のところ大丈夫」と思った方へ。この記事のいちばんの使いどころは、実はここです。
連絡が取れなくなってから慌てるより、平時に30分使うほうが、圧倒的に楽です。しかも、備えの中身は「制作会社を疑うこと」ではありません。担当者が自分ひとりのときに、自分に何かあっても会社が困らないようにすることでもあります。
明日できるものを、負担の軽い順に並べます。
- ドメインの有効期限を調べて、カレンダーに入れる(10分)。1か月前と2週間前の2回、リマインドを立てておくと安心です。年間の棚卸しはドメイン・サーバーの更新忘れを防ぐ年間チェックにまとめています
- 管理画面に、年に1回ログインしてみる(10分)。パスワードが生きているかを確かめるだけ。入れないことに「本番のとき」に気づくのがいちばん困ります
- 契約の連絡先を、担当者個人ではなく会社の代表アドレスにも設定する(10分)。更新のお知らせが担当者の受信箱だけに届く状態は、退職や不在で簡単に途切れます
- バックアップを、自分の手で1回取ってみる(30分)。取り方を知っていること自体が備えです
- 名義を確認する(30分)。ドメインとサーバーの契約者が自社になっているかを見ておく。管理権限を確認する手順を見ながらどうぞ
- 保守契約の中身を読み返す(20分)。連絡がつかないときの窓口や、契約が終わるときのデータの扱いが書かれていることがあります。保守契約の確認ポイントも参考に
全部やらなくて大丈夫です。1番の「有効期限をカレンダーに入れる」だけでも、いちばん重い事故は防げます。
なお、そもそもサイトが表示されていないときは、原因が制作会社側とは限りません。切り分けの手順はサイトが表示されないときの最初の確認にあります。
今日のチェックリスト
- ドメインの有効期限をWHOISで調べて、日付をメモした
- SSL証明書の有効期限を、ブラウザの鍵マークから確認した
- 自社で入れる管理画面を6項目で洗い出し、○△×をつけた
- この半年の支払い状況を経理に確認した
- 制作会社への連絡の記録(日付・手段・内容)を書き始めた
- 入れる管理画面から、取れるデータを手元にダウンロードした
- 管理画面に入れない場合、掲載中の文章と画像を保存した
- 社内に残っているロゴ・写真・原稿の元データを集めた
- 分かったことをA4 1枚にまとめた
- 次の相談先(サーバー会社/別の制作会社/専門家)を1つ決めた
一度に全部は無理です。上から2つ、「有効期限を調べる」と「取れるデータを落とす」だけでも、今日の価値は十分あります。残りは明日でも来週でも間に合います。
締めに
制作会社と連絡が取れないとき、いちばんこたえるのは、実は業務が止まることではないような気がします。
「自社のサイトなのに、自分では何も分からない」——その感覚のほうが、じわじわと重い。頼っていたはずの相手が急に見えなくなって、自分の足元だけがぐらつく。あの感じは、経験した人にしか分からないと思います。
でも、今日ドメインの期限を調べて、ファイルを手元に落として、分かったことを1枚にまとめた。それだけで、あなたは「何も分からない人」ではなくなりました。サイトの状態を説明できる人になった。これは、順調に運用できていた頃にはたぶん持っていなかった力です。
制作会社との関係は、これからどうなるか分かりません。連絡がついて何事もなく戻るかもしれないし、そうでないかもしれない。どちらに転んでも、手元にデータと情報があれば、次の一手は打てます。選べる状態にあることが、いちばんの安心です。
まずは、ドメインの有効期限を調べるところから。パソコンの前で不安になっているその時間を、5分だけ、そちらに向けてみてください。それで今日は、もう十分です。

※本記事は一般的な実務の考え方をまとめたものです。契約や未払い、廃業に伴う権利関係の判断は個別の事情によります。WHOISの表示内容、各サービスの画面・手続きの仕様も更新されることがあります。実際の対応は、各サービスの最新の公式情報や、弁護士・商工会議所などの相談窓口でご確認ください。
よければ、こちらも
- ドメイン・サーバーの名義は自社?管理権限を確認する手順
- サイト納品時に受け取るデータ・アカウントのチェックリスト
- 制作会社を乗り換える前の準備|困らないための確認リスト
- サイトのバックアップと復元の基本|取り方と戻し方
- ドメイン・サーバーの更新忘れを防ぐ年間の棚卸し
- 保守契約に何が含まれるか|確認したいチェックポイント
- 担当が変わっても回る引き継ぎ資料の作り方
「うちの場合、まず何から見ればいいだろう」と迷ったら、お問い合わせからいつでも声をかけてくださいね。一緒に順番に整理していきましょう。